もしも逃げてしまえば

推しを求めて三千里の途中です

推しロスしたはなし

推し
アイドル文化から生まれたこの言葉は、今やオタク界隈をも乗り越え、広く世間に知れ渡り、最早市民権を得ているといっても過言ではない…と思う。
特定の芸能人*1ひとりを応援すること。また、応援する相手そのものを指す言葉。推し
わたしは俳優ヲタではないのですが(学生時代ちょびっと片足突っ込んでたことはあるけど) はてブロの若手俳優グループの記事をよく拝見させて頂いております。バンギャさんや声優さんも然り。住むジャンルこそ違えど推しに対する想いや応援スタンスなんかは(個人差や価値観、考え方は別として)大体似たり寄ったりなことが多く、“推す”という行為がいかに尊くアグレッシブで、そして辞められぬものであるかというのを読む度に痛感します。そうね大変だよね…わかるわかる。

かくいうわたしにも推しがいました。はてブロでよく書かれているような俳優さん、声優さん、アイドルさんなどではなく、わたしの場合はバンドマンでした。しかもV系ではない、至って普通の。なんなら、推し文化がまったく浸透していないくらいの、学生時代のノリの延長線上で続けているような何の変哲も無いバンドマン。そんな人がわたしの推しでした。
“でした”。そう、過去形。
世間でも逃げ恥ロスやら福山ロスやらななみんロスやら、楽しみや希望を失ったという意味でロスロスロスロス聞くことが増えてきました。奇遇ですね、わたしもロスしたんですよ。推しロスってやつです。


身バレしない程度にわたしと推しの所属していたバンド、そして推し本人についても書いていきます。


数年前、たまたま聴いてたラジオで流れた音楽に一目惚れならぬ一聴惚れ。あ、このバンドいい。すごくいい!ってそのバンドにすっかり惚れ込んだわたしは、過去音源(って言っても新人だからミニアルバムとシングル1枚ずつしかなかったけど)を速攻で購入、聴き込んでいるうちライブにも行きたいなあと考えるようになり、偶然にも我が地元名古屋でのライブスケジュールを発見、そこで初めてそのバンドの生演奏を目撃。そのライブが本当にすごく良くて、こうしてこのバンドのことを追い掛けて行くことを決意。どっぷり沼にハマっていき、そのうち遠征なんかもするように。そして何度も何度もライブに通ううちに、下手側でいつも楽しそうににこにことギターを弾いているSくんに対して、ただただ単純なる「好きなバンドのメンバーさん」以上の感情が芽生えてしまい。推しというやつです。そこに至るまでにかなりいろんなことがあったけど、まあ割愛させて頂きますね。

ところで。
小規模な箱でライブしているバンドって、割と物販も自分たちで行ってる場合が多いんですよね。更に対バンのライブを袖ではなくフロアで酒片手に見ていたり。終演後もファンや対バン相手と喋ってたり。ファンも話しかけることができるんです。そこらへんフラフラしてたりするから。別に物販買わなくたって無銭でお喋り出来てしまうし、なんならサインも事務所の許可を取らずともさらっと書いてくれる。わたしもよくその公演のチケットにサイン貰ったりしてました。
で。バンドマンってエゴサしないとしぬ生き物らしいんですけど*2、それだけじゃなくてどうもtwitterのアカウントも特定する癖があるみたいで。現場で一度も名乗ったことないのにtwitterのリプライで「今日も最前ありがとう〜」とか飛んで来たり、逆に現場で「twitterのナントカちゃんでしょ?」とか言われるのは日常茶飯事だったりする。
まあお察しのいい方はお気付きでしょう、ある時Sくんにアカウントがバレました。「○○さんですよね?」と。絶対見つからない自信があっただけに敗北感がすごかった。完全敗北。Sくんすごい。

で、認知されて、次ライブ行くと「いつもありがとお〜」とか言ってくれるようになって、もっと行くとむしろSくんの方から話しかけられることもあったりして、どんどんどんどん好き好き好きー!って感じになっていってしまって。よく言いますよね、見たいと思ったらファン、だけど見られたいと思ったら厄介の始まりって。もう正直まさにそれだったんだけど、でも行けば行くほどバンド自体の楽曲レベルやライブスキルもぐっと上達してきてるのがよくわかったのも事実だったので、「ライブ見に行ってるんだも〜ん。別にSくんだけが目当てじゃないも〜ん。」って言い訳して。現場は解禁され次第片っ端からチケット確保して良番叩き出し、Sくんゼロズレ最前をキープ。本当に厄介だしぶっちゃけ何人か敵も作ったりしたんだけど、なにぶん集客力のないバンドだから(ごめん)、めちゃくちゃ太客ガチ勢ガッツなSくんTO*3なわたしのことを運営もSくんもそれ以外のメンバーも有難がってくれていた…と思う。そう感じていたし、大切にされてるなあって事あるごとに思ってた。これが営業なら彼ら全員バンド辞めてホストやった方がいい(?)

だけど、ある時期からなんとなく異変に気付きまして。あ、Sくんバンド辞めるつもりかも、って思って。まあその理由は色々あったんだけど、書き出しても仕方ないので省略します。でもその違和感のことを言い出すファンは誰もいなくて、ひょっとして気付いてるのわたしだけ?というかわたしの勘違いか…? なーんて思ってたんだけど、その数ヶ月後、唐突に「バンドから応援して下さるの皆様へ大切なお知らせ」が発表される。内容はやはりというか、Sくんの脱退だった。既に発表されていた1ヶ月半に及ぶツアーの後、現体制で受けたイベントを全て出演し終えた後に、Sくんは脱退することになったらしい。なんとなく察していた時点で覚悟は決めていたので、発表見ても「そっかあ…」としか思わなかった。それなのに、ご飯が食べられなくなった。笑い方がわからなくなった。ああ、Sくんって本当に大切な存在なんだって、改めて思った。

ツアーは元々行ける公演全部チケット取ってあったけど、ツアー終わってからSくんが抜けるまでの間の現場に関しては、もう無理矢理スケジュール開けて全部行った。どうしても調整できなくて半日仕事した後に新幹線駆け込んだりしたことも度々あって、そのせいで貯金は全部飛んだ。でもお金のことなんか構ってられなくて、Sくんのいるステージを見逃したくなくて、必死で。
それなのにSくんラストの宇都宮の日、日本列島を猛烈な台風が襲った。予定していた昼バスは運休。なんとか新幹線は動いてたので飛び乗って向かったけれど、ほんとは台風を理由に行くの止めようかって道中何度も思った。終わりなんて思いたくなくて。だけどライブは呆気なく終わった。台風だというのに全国各地からファンが集まって来てて、Sくんがどれだけ愛されている存在か実感した。不思議と涙は出なかった。終演後、“おいしくてつよくなる”からこれからも頑張れるように、というエールと、散々悩まされたことに対してのほんの少しの復讐心を込め、紙袋にこれでもかというくらい大量のビスコを詰めて渡してやったのに、受け取った瞬間その中の発酵バター味を見つけ「これ美味しいよねえ!ありがと!」って笑ったSくんが本当に可愛くて格好良くて、やっぱり大好きで、嫌いになんかなれなくて、でもこれが最後で、もうわけわかんなくなった。大好きだった。

 

思ったより長くなってしまった…だいぶ端折って書いたんだけどなあ。
現在Sくんは親のツテで社会人してるみたいで、でもまだ音楽はやりたいらしく、お金貯めて良い曲できたら戻ってくるだとか、今年中にはアルバムを出したいだとか言ってる。だけどあの台風の中、まるで今生の別れを告げに行くような覚悟を決めて宇都宮まで向かったわたしは、正直それを信じられずにいて。なんだかなあ…
Sくんのことはまだ大好きです。ハロウィンイベントで「トリックオアトリート!」って言ったらくれたピックをスマホケースに入れて、Sくんのサインの入ったウォークマンを持ち歩いて、たまに挫けそうになった時はSくんが書いてくれたチケットのメッセージを読んで。だけど、Sくん本人はもうライブハウスにいない。音楽やりたいって言ってても、それがいつになるのかわからない。そもそもSくんがやりたいのはどうも表舞台に立つ音楽ではなさそうだから、もしかしたら本当に、もう二度と会えないかもしれない。今はまだ、どうなるかわからないけど。

あー、会いたいなあ。もしくはとっとと次の推しに出会いたいなあ。今年の夏でSくん脱退からもう1年になってしまうのに、わたしは前に進めずにいるよ。ちくしょう。すきだー!!!!

 

 

*1:ネットアイドルやらYouTuberやら一般人と芸能人の区切りが曖昧な界隈も多く、かつ“推し店員”なんて使い方もされる昨今、この定義はなんとなく違う気がしますが、便宜上そうさせて下さい

*2:別にオープンアカウントでやってる以上構わないんだけど、本当に必死かつ確実に見つけてふぁぼってくるからたまに引く

*3:バンドマンに対してTOとかないわーと今なら思える